前回の記事では、ついにはじめてのモデリングに取り組みました。
3Dの作成ソフトは2Dのソフトと比べても操作が複雑ですが、
簡単なものを作ることで少し操作に慣れることが出来たのではないでしょうか?
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前回の記事3Dモデル基本のき③ ~モデリングをはじめよう!~
ここまで、3Dモデルとは一体何なのか、どのようなモデルが存在しているのか、 そして、モデリングのためにどのようなソフトが利用できるのかを見てきました。 特に前回は、実際に必要なソフトや、それぞれの特徴 ...
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MAYAなど他ソフトをお使いの皆さまも、
視点変更や選択(オブジェクト/フェース/エッジ/頂点)等基本操作がスムーズにできると、
ここからの内容も楽しみやすいかと!
さて、それでは早速、オリジナル作品や複雑なモデル作成の際に特に重要な、
モデリングの道すじ(=ワークフロー)についてご説明します!
カップラーメンとモデリング
皆さま、今からカップラーメンを作ると想像してください。
この作業はどうやら、そんなに大変ではなさそうですよね。
でももし、今から「マイコン窯でテストピースを焼いて」と言われたら?
まず、何の話か分からない方がほとんどだと思います。
難しいのかどうか、手間がかかるのかすら分かりません。
実はこの作業、難しくもなければ、手間もかからないんです。
けれどそれは、私が陶磁器を専攻していたから分かること。
「やって」と放り出されてできる人はいないでしょう。
カップラーメンを作ることがそれほど難しく感じないのは、
何を用意して、何をしたら完成するかが完璧に分かっているから。
これを知っていればこそ、卵を入れるとか味変するとか、
オリジナリティを出すこともできるのです。
モデリングでも同じことです。
モデルをひとつ完成させるまでの工程を知ることで、
作業開始から完了までの道すじを分析・想定し、
更にはオリジナリティをどこで出していくのかを把握・実行できるでしょう。
講座の内容をなぞるだけでなく、自由にモデリングが出来るようになるためには、
作りたいものから必要な工程を逆算して作業計画を立てる力が必須なのです!
気になるその工程は、大きく分けて下記の6つ!
…はい。以上の通りです。
実は画像のような複雑なモデルを作る時は
これらの工程を繰り返したり分割したりするのですが、
これから行っていく基礎的なモデリングの練習は一本道で行います。
今は、工程の繰り返しや分割はハイエンドゲーム向けのモデル等に有効だというイメージを心の片隅に置いておいていただければ十分です。
それぞれの工程には異なるスキルが必要なため一気に理解するのはとても難しいですが、
概要をざっくり説明していきますので、大まかなイメージを掴んでいきましょう!
①資料(リファレンス)集め
始めに必要なのは、なんといっても資料(リファレンス)。
良質なリファレンスを味方につけられるかどうかで、
ここから先の作業の明暗が分かれるといっても過言ではありません!
3Dモデリングにおいてリファレンスが重要な理由は、主に以下の通り。
- 自分の作りたいもの、作るもののイメージを明確にできる
- 長い作業時間の中で、悩んだり迷走することを防げる
- 物の構造を分析・理解して制作物に落とし込むので、上達が早まる
つまり皆さんが集めたリファレンスは、
悩む時間を減らし、作業時間そのものも削減して、更に上達も早めてくれるのです。
折角時間を見つけてモデリングをするなら、短時間で沢山モデルを作って、
どんどん上達したいですよね!
ちなみにコチラの記事では、そんなリファレンス収集に大役立ちの
サイトとツールを紹介しております。
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チェック!作業開始で差をつける! モデラーのためのリファレンス
モデリングを始める時の大切な工程…皆さまは何を想像しますか? その答えは、リファレンス(参考資料)探しです。 ひとりのプロのモデラーとして断言しますが、 どれだけ良い資料を揃えられるかで、冗談抜きで5 ...
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完成したモデルの投稿に使えるサイトもありますので、
是非チェックしてみてくださいね!
②モデリング
次に作成するのは、モデルの形状=メッシュです。
前回ご紹介したBlender講座の動画では、
作成したメッシュにそのままマテリアル(=材質)を設定して完成でしたね。
動画に沿ってモデル制作を始めてみた皆さまは、
この工程には一度触れたことがあるということになります。
またこの工程では、全体のシルエットを取る力はもちろん、
ポリゴンを扱う力が必要になります。
適切なトポロジーで、適切なシルエットを持つメッシュを作り出す。
それがモデリング工程の役割なのです!
ここで、「ポリゴンって結局なんだっけ?トポロジーって?」となった方は、
こちらの記事もぜひ参考にしてみてくださいね…!
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チェック!3Dモデル基本のき① ~モデルはなにから出来てるの?~
早速素敵なキャラクターのモデルを作りたい! でもちょっとお待ちを、そもそもモデルって何からできているんでしょう? 気になるその答えは… ポリゴンです。 …この答えを見て、「当り前じゃねえ ...
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③UV展開
さて、お次の工程は少々厄介な、UV展開です。
何が厄介かと言うと、「結局UVって何?」というのが、
3Dを触ったことがない方にはとても伝わりにくいのです。
触りながら感じを掴む!というのも大いにありなのですが、
ここではイメージとして、ペーパークラフトを想像してみてください。
出展:コスパ ポータルサイト グラフィグ001 初音ミク Nasos ver. [初音ミク]
モデリングの工程で作成したメッシュを、展開図状に開いてあげる。
それがUV展開です。
3Dモデルは、実は2Dの画像から読み取った色をポリゴンに貼り付けることで描画しています。
その2D画像を描くために、メッシュを展開図にしてあげて、
どの位置に何のパーツの色を塗る必要があるかを指定するわけですね。
UV展開は、次工程のテクスチャリング(=2D画像作成)のための下準備なのです。
④テクスチャリング
テクスチャリングは、先ほどのUV展開で作成した展開図をもとに
モデルの色を指定するための2D画像、すなわちテクスチャを作成する工程です。
3D空間上でモデルにそのまま描き込めるようなソフトもありますが、
実際には描き込んだ情報を2Dの画像に転写しているだけで、
テクスチャリングの完了後には2D画像をエクスポートして扱います。
この工程が終われば、モデル自体の見た目は出来上がり!
前回ご紹介したリンゴや、単純な剣や盾といった小物はここまでで完成です!
でもこのままでは、キャラクターのような動くモデルを動かすことはできません。
作成したモデルを動かすには、更に二つの工程が必要になるのです。
⑤リギング
作成したモデルを動かすための工程、その一がこのリギングです。
リギングとは、モデルの中に骨(ジョイント、スケルトンなどとも呼ばれます)を入れて、
アニメーションをさせるための仕組みを作る工程。
この時入れた骨が、回転や移動、拡縮といった様々なアニメーションの基点となります。
キャラクターで言うと、関節を設定してあげる作業というわけです。
そして後述のスキニングの工程を行うことで、
骨の動きに沿ってモデルを動かすことができるようになるのです。
骨に対してアニメーションを付けやすくするコントローラーの設定作業もリギングと呼ばれますが、ほとんどの場合モデラーが手を入れるのはこの骨入れの段階まで。
それ以上の、コントローラーを設定する段階になると、リガーと呼ばれる専門の役職の方が作業を受け持ってくれます。
また、モデラーにとってこのリギング(骨入れ)の工程はとても重要であることを是非覚えておいてください。
例えば腕を降ろす時に、肩の骨の位置が外側にずれていたらどうでしょうか?
腕はそこを回転に降ろされることになるので…
肩幅がすごく…広くなります。
完成したモデルが「動いたらなんか変…」とならないためには、
適切な位置に骨を入れてあげることが重要なのです!
おわかりいただけただろうか…
⑥スキニング
ついに最後の工程、スキニングです。
このスキニングの工程では、先ほど設定した骨に対して、
どのポリゴンがどれだけ影響されるかを設定します。
例えば前腕の骨の動きに対して、前腕のポリゴンが完全に追従する、
といった風です。
この工程を踏まないとポリゴンが骨についてこないため、
折角ポーズやアニメーションを付けてもモデルが動くことはありません。
なかなか根気の必要な作業になりますが、丁寧に仕上げていきましょう!
これでしっかりと見た目の出来上がったモデルを、
適切な形で動かせるようになりました!
さいごに
お疲れ様でした!
これら一連の作業をこなすことで、
キャラクターのような複雑なモデルも完成させることができます!
一気に全ての工程を理解することは非常に難しいので、
実際に手を動かしながら少しずつ知っていってあげてくださいね。
さいごに、各工程のおさらいを少ししておきましょう!
ポイント
- モデル作成の明暗を分ける、リファレンス集めから始めよう!
- モデリング工程では、適切なトポロジーとシルエットに気をつけて!
- UV展開は、ペーパークラフトの展開図を作る作業!
- テクスチャリングは、2D画像を塗る作業!
- リギングでは、骨の位置に要注意!
- ポリゴンの挙動を決める、スキニングは丁寧に!
さて、次回はこれからのモデル作成について、
ズバリ「どうやったら早く取りこぼしなく上達できるのか」について説明していきます!
絵を描くことになじみがある人、ない人といった経験別のお話もしていきますので、
お楽しみに!